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【しごとコレクション】

自分に合いそうな仕事・興味の湧く仕事を集める

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ネイルアーティスト

しもむら さおり

下村 沙織さん

26歳・水戸商業高等学校出身

  • 3次産業
  • Border Vol.2
  • ネイルアーティスト
  • 女性
  • 美容
  • 茨城県央

お互いに満足感を持てるように心を込めて

「絵を描く」という共通点を感じた

最初からネイルアーティストになろうと思っていたわけではく、商業高校で学んだ会計や簿記の能力を活かそうと思い、経営学部のある大学に進みました。大学で税理士になりたいという夢ができて、3年間必死で勉強しました。でも、4年生になっていざ就職活動が目前に迫ってくると、自分は本当に税理士になりたいのか迷ってしまいました。税理士は、実際に合格して働けるようになるまで何年もかかるので、社会に出ることが不安だったんです。そこで進路を変える大決心をしました。

ちょうどその頃、母の経営するエステサロンから声がかかり、美容関係の仕事に就いてみようかなと思いました。「美容の仕事をするんだったら、何か勉強してきたら」という母の助言から、ネイルの仕事をやってみようと思いました。元々中学・高校時代は美術部だったので、「絵を描く」という共通点を感じたのがきっかけです。それで大学在学中にアメリカの美容学校に1ヶ月留学して、ネイルアートの基本を勉強しました。

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修学旅行で行ったハウステンボスでの一コマ。一番左が私。この頃は、好きだった美術が自分の将来に影響するなんて思っていませんでいた。

サービスの提供とプレッシャー

働き出して間もなく、お客様を相手にマニキュアを塗ることから始めました。ネイルアーティストとして働いたことがあるわけでもなく、本当に素人としてのスタートだったので、まだお客様に提供できないという戸惑いもありました。でも、いつまでも踏み出さないでいるよりも、早く始めた方が自分のためになると思ったんです。もちろん、プレッシャーはありました。その頃は、習い立てで基本的な技術しかなかったので、お客様に満足してもらえるかどうか不安でした。でも、技術は、たくさんのお客様を相手にして経験を積まないと伸びないんです。だから、私の場合はお客様に育てていただいた部分が大きかったですね。お客様から、こうした方がいいんじゃないかとか、こんなネイルもあるよとか、今回は長持ちしたよとか、感想や情報を教えて頂いて、それがいい刺激となって頑張れました。

ただ、お客様の要求が増えてくるにつれて、自分の技術の限界も見えてきてしまい、その要求に追いつくためにも必死でしたね。練習はもちろん、本を見て勉強したり、アメリカの美容学校の先生にFAXや電話で質問することもありました。

技術と癒しのサービス業

この仕事で大変なのは、お客様とのコミュニケーションのとり方ですね。お客様とは、大体2~3時間を対面したまま一緒に過ごします。私は内気で、積極的な性格ではないので、初めの頃は場を持たせるのが難しかったです。近い距離で長い時間対面しているというのはすごく緊張するんですよ。ほとんどの方が初対面ですし、年齢層も幅広いので、お客様に合わせた会話を考えなくては不自然な空気になってしまいます。かといって3時間しゃべりっぱなしでもお互いに疲れてしまいますから、そのバランスには気を使いますね。お客様は癒しを求めて来ているわけですから、休みたいお客様には無理に会話をしないように様子を見ながら作業します。いくら技術が優れていても、下手な接客をすればお客様に不快感を与えてしまいます。だから、ネイルの技術と接客の技術はどちらも大事なんです。私は究極のサービス業だと思っています。

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新しく出てくるネイルの技術にも対応できるように、たくさんの素材をそろえ、日々勉強するように心がけています。

気持ちが爪に表現される

スランプに悩んだ時期もありました。自分の技術が伸び悩むようになって、このままネイルアーティストとしてやっていくことに不安を感じたんです。その時はそういう気持ちが仕事に影響していることに全く気付きませんでしたが、お客様に提供するネイルの仕上がりに対して、「このくらいの仕上がりでいいや」と見切りをつけてしまうようになっていたんですね。「きっと世の中のネイルアーティストさん達もこの程度の仕事なんだろう」とさえ思っていました。でもそれは間違いでしたね。

そんな時に、再びアメリカに勉強しに行き、他のネイルアーティストと接する機会があったんです。そこで目にしたのはレベルの高い作品ばかりで、「こんなに良い爪も作れるんだ」と感心するばかりでした。この時を境に、自分の仕事に対する態度に気付いて、「自分はまだまだだった。もっともっと上を目指そう」と思い直すことができました。

この時に、仕事に対する気持ちというのは、そのまま作品に反映されてしまうんだということを思い知りました。それからは絶対に妥協をしないようにしています。例えば爪の形一つにしても、お客様のご要望の形を必ず作るように心がけています。そうすることで、お客様はもちろん自分も満足できるものが仕上がると思うんです。そのためには時間が多少かかってしまうこともありますから、お客様にその旨をお伝えし、予約の時間は余裕をもって入れるようにしています。それから、一日にお相手するお客様は3人、メニューによっては多くても5人までと決めています。お客様に喜んでいただきたいので、集中力を保つために無理はせず、お互いに満足感を持てるように心を込めて作業するようにしていますね。

ネイルアートは大工さんのような仕事

この仕事に就く前は、ネイルアーティストって、爪に色を塗って絵を描いて、とても綺麗で華やかな世界だと思っていたんです。でも実際は、爪を作っている間が意外と大変なんですよ。ジェルなどの人工爪は、3時間あるうちの2時間は土台作りに消えてしまいます。爪を削る作業は技術や集中力もいりますし、工具のようなものも使うので、ほとんど大工さんのような感じですね。でも、この土台をいかにしっかり作ったかによって、仕上がりに格段の差が出てきます。最後の時間で色を塗り、アートをすると、みるみるうちに爪が綺麗になっていくんです。

この仕事をしていて一番嬉しいのは、やはりいい爪を作ることができて、お客様に喜んでもらえた時ですね。それがあるから続けられるんだと思います。自分では良くできたと思っても、お客様に満足してもらえなければ意味がないので、作業の途中で何回かお客様の意向を確認をするようにしています。作業中に「ここはこうしてほしい」と言って頂ければありがたいんですけど、言えないお客様もいるんですね。例えば美容室で髪を切ってもらっていて、途中で少し短いと感じていても言い出せずに、結局仕上がりがイメージしていたものと違ってしまったりしますよね。そういうことのないように、お客様の要望を察知しながら作業をしています。

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キレイな爪を仕上げるには、甘皮を取ったり爪を削ったり、土台作りが大切です。だからこの道具が重要なんです。

自己研磨をしっかりしながら

将来はもちろん、自分のお店を持ちたいと考えていますが、自分の技術を評価するために、作品をコンテストに出したり、研修を受けたり、自己研磨をしっかりしながら、今はとにかくここで技術をしっかり身につけることに力を注ぎたいですね。何事も土台がしっかりしていなければいけないということを、このネイルアーティストという仕事から学びましたから。