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【しごとコレクション】

自分に合いそうな仕事・興味の湧く仕事を集める

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陶芸作家

しおや りょうた

塩谷 良太さん

30歳・東京都立調布北高等学校出身

  • 3次産業
  • Border Vol.4
  • 専門・技術サービス
  • 男性
  • 茨城県南
  • 陶芸作家

誰かが『いい』と言っていたから『いい』と言うのではなくて、自分自身の価値観で良い・悪いを判断してほしいですね。

取材者からの紹介

陶芸作家として活躍される一方で、陶芸教室の代表と高校の先生をされています。陶芸教室の共同運営者である、大学時代の同級生の方にインタビューを聞かれて照れている姿がとても印象的でした。続けるのが簡単ではない道ですが、情熱をもって働かれている方だと思いました。陶芸とものを作ることが本当に好きな塩谷さんだからこその働き方だと思います。

たまたま焼き物に出会った

幼いころから何かをつくったり描いたりというのが好きでした。

造形を学びたくて入学した大学の授業で、陶芸に出合いました。焼き物屋の息子とかではなくて、何かつくるのが好き、表現するのが好きというだけで、その過程での偶然の出合いでした。高校の時点では陶芸をやろうというつもりは全然ありませんでした。

陶芸を始めてみると、焼き物は触覚的なところが多くて、自分の思い通りのものが出来るかそうでないかは、その人のそのときの微妙な感覚で決まるんです。気持ちいいものが出てくるまでいろいろと試して、納得するものが出来ないと気がすまなくなりますよね。そこから陶芸の魅力にはまっていきました。

僕は明確な目標に向って進んでいくタイプではなく、その時々で自分の方向を決めて進んでいます。「こういうのになりたい」と思ってやるよりは、自分が楽しいほう、気持ちいいほうを自然と選択するタイプで、「絶対こうしたい」という積極的な選択はあまりないですね。

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文化祭でお化け屋敷に使うお化けを作ったときの写真。美術の世界に進もうと考えはじめたのは、高校2年の終わり頃でした。

どうしても続けたくなって

大学4年のときに就職しようか陶芸を続けようか迷いました。一般企業への就職試験も結構受けたのですが、全部落ちたんです。さらに教育実習や前期試験の制作の締め切りが迫っていて余裕がなくなっていたのですが、その頃に、作家活動の中で現在までずっと続くテーマと出合ったんです。それがすごく楽しくて。どうしても陶芸を続けたくなって、就職して陶芸を辞めるのではなく、大学院に進学して陶芸を続けることに決めました。

大学院を出ると、大学院にはあった窯やろくろなどの陶芸を続ける環境がなくなってしまいました。何の当てもないまま、狭い6畳一間の木造2階のアパートで、200キロ以上の作品を作ってしまいました。「どうしよう」と思って近隣の陶芸教室に片っ端から電話をかけました。その中に今の陶芸教室があって、アルバイトとして働き、仕事を覚える代わりに窯を使わせてもらえることになったんです。それから1年半アルバイト雇用していただいて、その後大学の同級生と2人で合同会社として立ち上げ、今では教室の運営を任せてもらっています。

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市販のものと自分で作ったものの両方を使っています。

陶芸作家の活動を続けるために

実は、大学院の1年のころから高校の非常勤講師をしていて、現在は2校で工芸と美術の授業を持っています。陶芸教室の運営と高校の先生と作家活動と3つの仕事を行っています。こういう形で働いているのは、作家として経済力がないからです。陶芸を続けるのに、ないものばかりで、それを埋め合わせるために非常勤講師をしたり、陶芸教室でお世話になっているんです。陶芸作家の活動を続けるために、必然的に選んだ形でした。

3つの仕事をかけもちするのは、やっぱり大変ですね。週に3日東京に行かないといけないというスケジュールも大変。仕事をかけもちしていても、やっぱり経済的にきついです。

長く陶芸を楽しめるように

陶芸教室での仕事は、教室に来られる方々がつくった器の乾燥の管理、釉薬(陶器の表面に塗る薬品)の調合や管理、陶器の焼成(焼くこと)等です。日曜の陶芸教室の指導もやっています。

僕の教え方は、一つのものをずっと修業的にやってもらうのではなくて、つくりたいものに合わせてカリキュラムを組んで教えていきます。「こういうつくり方をしなきゃいけない」というふうに教えてしまうと、それ以外のやり方でつくろうとしなくなってしまうんですよ。これにはびっくりします。ですから「こういうふうにしなきゃいけない」ということをなるべくなくして教えたほうが、多分その人は長く陶芸を楽しめると思います。そのために飽きてマンネリ化しないようないろんな企画を立てたりしています。

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Work Scene Cramic Clip 2005

気づいた瞬間が見える

高校や陶芸教室での指導では、生徒が何かをつくっていく過程を、生徒を見ながら自分で追体験できるのはおもしろいですね。生徒が体験していることのほとんどは僕が過去に1度体験したことがあることなので、「今あの場面になって、ああいう気づきやあんな感動がある」というのが共感できるんです。また、「この場合はこういう状態だからこういう手順を踏んで作らなくてはいけない」ということを僕は知識として分かっていますが、生徒はわからないものです。そこを教えているときに、生徒がどうすればいいかに気づいた瞬間が見えると、見ていて面白いし、うれしいですね。

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Work Scene 蛤クリップ・大(氷を挟む) 2005

反応がうれしい

陶芸作家として、展示会を開催し、自分の作品を発表することもあります。開催方法は、1つは個展で、自分で画廊を探すか、画廊から依頼を受けて開催する方法。2つ目は、美術館や地域団体から声がかかって開催する方法。3つ目はグループ展で、作家仲間やキュレーターの卵たちと組んで開催する方法。公募展といって、画廊が一般から作品を募集して開催する方法もあります。

多くの人に見てもらう機会を得られるのはうれしいですね。開催の申込をしていた展示会場から手紙が来て、開催できるとなったときはすごくうれしいです。でも、搬入や設置など、開催までの準備が大変です。展示できるのはうれしいんですけど、終わるまではつらいですね。

作品を見てもらって、人から反応が得られたときが一番うれしいです。その反面、無視や無反応が一番つらいですね。作品を見て、バッシングでもいいから何か反応してほしいです。何か感じて欲しい。その方が作家としてはうれしいですね。

自分自身の価値観で判断してほしい

以前、小学校で展示をしたことがあります。廃校を発表の場にするのはよくあるのですが、今も児童が生活している小学校でできたんです。こういうことはめったになくて。一人の作家が一つの教室を使って展示をしました。僕の作品は貝型をした陶器でいろんなものを挟むものでした。小学生も見に来て、反応はすごく面白かったです。でも、高学年の女子の場合だと、リーダーみたいな子が「あっ、ここつまんない。次、行こう」と言うと、中を見たわけでもなくみんな行ってしまうんです。本当に悲しいことでした。その様子を見て、実は人は皆、まわりの人に合わせているだけで、「自分で判断していない」ことが多いのかもしれないなと思いました。ちゃんと見て判断して欲しい。誰かが「いい」と言っていたから「いい」と言うんじゃなくて、自分自身の価値観で良い・悪いを判断してほしいですね。

将来については特にこうなりたいという明確な目標はないです。ただ、「もっといろんな人に見せたい、いろんな人に伝えたい」と思っています。

僕の作品や、学校・陶芸教室でいろんな人に教える活動を通して、ものごとを先入観なしに丸腰で見て、いいもの・悪いものを自分で判断できる人を増やせたらいいですね。

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Work Scene Cramic Clip 2008

先輩上司から一言

何人かの若手にこの一角をアトリエにしてもらって使ってもらってるんですが、2年、3年ぐらいここに下宿しながら作品を製作して、いろんな理由で次のところへ巣立っていってます。彼は、本来はアーティストとして世界デビューしたいという考えを持っている方ですから、ずっとここにとどまってというよりは、巣立っていくのがいいというか、そうしていってほしいなと思います。少なくとも、ここでやっていることは、彼が目指してるものの中のごく一角のことですので、そのごく一角のことのために本来のものが犠牲になるような関係だとやっぱりいけませんから、それは私も割り切ってます。

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