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【しごとコレクション】

自分に合いそうな仕事・興味の湧く仕事を集める

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救急救命士

なかしま ちひろ

中島 千尋さん

23歳・宮崎県立都城東高等学校出身

  • 3次産業
  • Border Vol.1
  • 公務
  • 女性
  • 救急救命士
  • 茨城県南

「絶対に助けたい」という気持ちだけは日々忘れずに。

命に関わりのある仕事が

私は中学時代、部活動のために、家族と離れて他県で暮らしていました。そのため、離れていた分、家族のことは誰よりも大事に思っているし、ずっと元気でいてほしいという思いもあり、はじめは介護に興味を持ちました。しかし、高校時代の先生から、「介護士という資格取得は卒業してからでも遅くない」と、助言を受け、現場に最初に駆けつけて助けられる、救急隊員を目指しました。結局、人の役に立つような、命に関わりのある仕事がしたかったんです。

ベストな処置で医師へつなぐ

仕事は朝の8時半から次の日の8時半まで働いて、その日は明けて休みで、その次の日は丸1日お休みです。24時間勤務ですが、6時間は仮眠していいことになっています。深夜に救急が入ると眠れないことも度々あります。出動は多い日で10件以上、少ないと1~2件ですが、0という日は体験したことはないですね。

今の日本の医療は、医師でなければできない部分が多くあります。しかし、スタッフや設備の整った施設があっても、現実に病人・けが人が発生するのは、日常の何でもないところがほとんどですよね。この間をベストな処置でつなぎ、いかに医師に対して良い状態で引き継ぐことができるか、そこを司るのが救急隊であり、救命士です。そのため、私たちの処置によって医師の施す効果がより高くなることも、誤りによって逆のケースに陥ってしまうこともあります。

救急救命士とはあくまで資格

学生の時は、救命士は何でもできて救命できるイメージがあったのですが、現場に出てみると救急救命士とはあくまで資格でしかないということを強く感じますね。救命士にできることはわかっているのに、瀕死の状態の人に一生懸命処置をしても助けることができなかった時は、自分は無力だなと思います。

実際の現場では患者一人ひとりの症状は異なり、同じケースということはありません。状況に応じた処置をその場で学び、自分のものにしていくという感じです。学校で勉強した知識がそのまま活かされることは全くと言っていいほどないですね。

女性だと認める部分は認めて、でも甘えるのではなく

茨城県内で救急救命士として男性と同じように働く女性がいるのは、ここの消防署と他2ヶ所のみで、全国的に見ても女性の消防職員数は非常に少ないです。ここでは女性救命士の採用は今年が初めてで、同期で他に2人の女性が働いています。

当務は、女性が1人ずつ3班に分かれているので、職場で一緒になることはありません。でも、男性職員には言いづらい悩みを聞いてもらえるだけでも違うので、2人がいてくれて本当に良かったです。

救命士は体力勝負なので、力の面でかなり不安がありましたね。特に私は身長が152cmしかないので、体力をつけるために走ったり、筋トレをしたりしています。ここは、出動件数が多くて、勤務中にあまりトレーニングができないので、休日に行なっています。昔は大嫌いでしたが、現場で活動するには大事だと思い、走り始めたら好きになりました。毎日5kmは走っていますよ。

採用試験時には、男性と同じ体力試験を受けました。救命士には体力が必須なので、専門学校の1年生の頃からずっとジムに通っていましたね。背は低くても握力は40kg、バーベルも40kgぐらいは上げられますよ。何もやっていない男性にだったら勝つ自信はあります(笑)。

現場ではもちろん、女性というのは関係なく働いています。でも、自分で持ち上げられる人は持ち上げますが、患者さんが大柄な男性の場合は、無理をすると患者さんに危険が及ぶので、替わってもらうようにしています。女性だと認める部分は認めて、でもそれに甘えるのではなく、自分のできる範囲はやり、その上で他の救急隊員たちと一緒に頑張ろうという感じです。

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先輩方の理解があるからこそ、女性の私でも頑張れます。

一番怖いのは命に対して慣れること

働き始めた頃は、女性の私だからできることをしなければという考えでした。でもそれより、一救命士として自分が今できる精一杯の手を尽くすことが大事だと気づきましたね。一生懸命に話を聞き、処置をすることのほうが、患者さんにとって良いことですから。

絶対に助けたいという気持ちだけは日々忘れずに持っています。一番怖いのは、処置にではなく命に対して、「またか...」と感じるような「慣れ」が出てきてしまうことだと思います。患者さんに確実にマイナスになることなので、命にだけは慣れないようにしています。

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いつどんな時でも対応できるように、救急車の点検・整備は気が抜けません。

この制服を着ている以上は

周りの方々のサポートもありますし、何よりも楽しいので救命士を辞めたいと思ったことはありません。自分が好きで選んだ仕事ですしね。

ただ、辛いこともたくさんあります。特に、子どもの命を救えなかった時は、落ち込んで泣いてしまうこともあります。そんなときに同期の2人や先輩に、その経験を糧に頑張るしかないと励まされたりして、次こそはという気持ちでやっています。立ち直りは早いほうですが、引きずってしまうこともあります。でも、そのままでいたら、次の現場で不安が表情に出てしまって、患者さんに悪影響を与えてしまいますよね。だから、救急救命士というワッペンをつけて、この制服を着ている以上は、自分の中できちんと気持ちを切り替えて任務に当たるように心がけています。

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救急救命士のワッペンは、責任と任務を果たす義務の証です。

「あなたが来て良かったよ」と言ってもらえるように

私が試験を受験した年は、地元で女性の採用がありませんでした。一年待てば、地元の試験を受験できたので、この消防署に受かった時は、正直迷いました。その時、親に「頑張ってきなさいよ。本当になりたかった職業に就けるんだから」と言われ、決心がつきました。親としても心配だっただろうし、帰ってきて欲しいという気持ちもあったと思います。でも、快く送り出してくれたので、心配をかけないように、いつでも「頑張っているよ」と言えるようにしておきたいと思っています。

つくばに住んで働いてみて、職場の上司の方や先輩を含め、人が温かいところだと感じています。だからずっとつくばで一生懸命働いて、いつか「あなたが来て良かったよ」と言ってもらえるように頑張ります。