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【しごとコレクション】

自分に合いそうな仕事・興味の湧く仕事を集める

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教習指導員

はかまづか ゆきこ

袴塚 有希子さん

29歳・大成女子高等学校出身

  • 3次産業
  • Border Vol.3
  • 女性
  • 教習指導員
  • 教育・学習支援
  • 茨城県北

人間、接しやすい人とそうでない人がいる。それだけで区切っちゃうと視野が狭くなってしまう。

取材者からの紹介

人と接することが好きで、「常に感謝の気持ちと謙虚さを持って接すれば、相手もそれに応えてくれると思う」という言葉が印象的でした。元バレー部で長身。二輪に乗っている姿はとても格好よかったです。

人に教えるという仕事に違和感がなかった

高校生のときは、人に物を提供して喜んでいただくというサービス業に就こうと思っていました。でも、親しくしてくれたバイト先の先輩に、「人にものを教える仕事が向いてるんじゃない?」と言われたことがありました。自分では人に教えることのできるタイプではないと思っていたんですけれど、短大の求人募集で自動車学校の教習指導員を偶然見つけて、「受けてみようかな」と思ったのがきっかけでした。いつの間にか指導員になっていたという感じですね。高校の部活はバレーボール部に入っていて、中学生の子どもたちに基本を教えた経験があり、そのときに教えることに全然違和感がなかったのも、指導員になったきっかけかなと今になって思いますね。

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高校時代、バレーボール部に所属し、毎日練習練習の日々でした。そこで身に付いた忍耐力が社会に出て役に立っています。

人と接することが好き

入社して1年間は、受付・送迎、誰が何号車に乗るか振り分ける配車受付などの事務の仕事をし、その中で教習を進めていく流れを覚えていきました。そこで生徒さんたちと親しくなれたんですけれど、それだけじゃなくて、「外で教習にも挑戦してみたらどういう感じなのかな」と思えてくるようになったんですね。自分の性格上、事務は合ってないのかなという感覚がありました。人と接して、そのとき直感的に感じたことを言える関係が好きだったので、指導員の勉強をして資格を取りました。

入社した頃は、普通自動車免許しか持っていなくて、1年間ペーパードライバーだった時期もありました。二輪には乗ってみたいと思っていましたけれど、車にはまったく興味がありませんでしたね(笑)。仕事をしながら、二輪や大型自動車の免許を取り、教習指導員の資格も取得しました。他の教習所を見ても、二輪を教えている女性指導員は少ないと思います。

自分に責任を持って行動する

「指導員」というと、ちょっと怖いイメージがありますよね。だから、初めはフレンドリーな指導員になろうとしていたんですけれど、それだけじゃ駄目だって思ったんです。生徒さんが免許を取って運転するときは、指導員はもういないですよね。一人で運転するとき、今まで教習してきたことを生かせるかといったら、そうでもないんです。運転の土台を作るのは私たちなので、性格とか癖を見ながら指導しなくてはいけないと思いますね。とても繊細な仕事なんです。運転には性格が出るので、適性検査をして、その人の性格を分析し、その結果を参考にしながら接します。教習でも、その人の癖を見つけながら指導やアドバイスをするので、観察力も必要なんですよ。その人のことをよく見ないと教えられません。

運転技能の指導では、わかりやすく教えたいので、本当に細かく指導します。技能だけじゃなく、運転の基本としての姿勢・心構えも教えます。運転って、姿勢で決まるんです。手や肩、ひじの動きとか関節などを見るんです。こういう操作をすると、ここが悪くなるから直そうというように指導します。目線やアクセルの踏み方、ハンドルの回し方など、そういう所から見ていきます。

教習では、常に自分に責任を持って行動することを心がけています。教える内容や一般道に出るときの生徒さんの運転技能に対して、責任を取るということです。初心者(仮免許取得者)を乗せて一般道に出て教習するので、いつも神経を張り詰めていますね。それでも、自分の指導不足だったり操作があまり上手くいかず、周りの車に迷惑をかけてしまったり、自分が教えた項目で生徒さんが検定に落ちてしまったりすると、責任を感じますね。

教える側と教わる側という関係

私はミスしてもあまり覚えていないんですけれど、昔、教習に熱が入りすぎたせいか生徒さんと言い合いの様になって落ち込んだことがあります。私の指導が事務的すぎて感情がないと言われたこともあります。「事務的な対応をされると、こっちも力が入っちゃうから教習しづらい」と。私はその人からアドバイスをもらったんだなと思っています。そんなことがあってから、やっぱり私は愛嬌のある指導員になろうと思いました。

でも親しくなりすぎてしまって、教習する側と教習される側という関係が保てなくなったときもあります。声をかけられるのは良いんですけれど、それが教習中だとちょっと...。年頃の男の子で茶化したり、仕事に差し支えが出る態度をとられたりしたことがあり、これじゃいけないと思ったんです。それでちょっと距離を置くようにしました。それに、親しすぎると教習中に言わなくてはいけないことを言えなくなってしまうんです。でも、距離を置きすぎると怖いと言われるし...。難しい関係ですね。

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本当は固い教習は好きではないのですが、教えるのに必死で...。指導員歴8年でもまだまだで、日々試行錯誤です。

いろいろな人と接する

この教習所には年間2500人位の方が入所され、毎日何人もの生徒さんと接します。免許を取らなきゃいけない人や運転が好きな人は上手くなるんですが、興味のない人は「やらされている」という感じがあるようで、どうやってやる気を起こさせようか考えますね。ぶっきらぼうな人や返事をしない人もいます。やっぱり人間、接しやすい人とそうでない人といると思うんですけれど、それだけで区切っちゃうと視野が狭くなってしまい、指導ができなくなります。いろんな人がいるんだなと考えて、その人を受け止めていかないと丁寧な指導ができませんね。

年に数人ほど、片手がない方や、足が不自由で義足の方など身体に障害を持った方が教習を受けに来ることがあります。器具を取り付けて運転するんですけれど、技術面では健常者と同じように教えます。体のつくりは同じなので、操作するポイントや重要なところも同じなんです。そういう方たちはとても一生懸命で、接しているとこちらが勉強になります。

これまでたくさんの生徒さんを教えてきましたが、生徒さんたちから感謝の言葉をいただくと、やっていてよかったなと思います。免許を取った後も来てくださる方がいて、「袴塚さんの教習はわかりやすかった」とか、「ありがとうございました」とか声をかけていただくと嬉しいです。「ゴールド免許取ったよ」とか報告に来てくださる方もいます。

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教習原簿と手帳に押す印鑑。ハンドルを回すとき、夜間に道を譲ってもらった時にお礼の意思表示をするときなど、白い手袋は必需品。

ほかの世界にも結びつきたい

この仕事を始めて今年で8年になりますが、職場の雰囲気がいいので続けていられますね。アットホームな雰囲気で、みんな団結しているんです。教習の一項目ごとに違う指導員が教えることがあるので、団結力で一人の生徒を育てるという意味で協力し合っていますね。

この教習指導員の仕事をしている以上、事故を起こさない人を育てていくことが目標です。さらに、指導力をスキルアップして自分自身を向上させていきたいです。今年の6月から聴覚に障害を持った方たちが教習を受けられるという教習の導入や外国の方もたまに来るので異文化コミュニケーションとして言葉を覚えたりこれから色々してみたいですね。人と接していると、いろいろな世界が見えるんです。勉強させていただくこともあります。この仕事だけに固執するのではなく、ほかの世界にも結びついていければいいなと思います。

先輩上司から一言

若い人が「何かやりたい」って言うと、「やってみな」と言うんですよ。挑戦してみなって。「私があなたの年齢だったらもっと何でもやるよ」って言うんですよね(笑)。指導員の資格を取るだけの難関を突破してきたんですから、一人前になるために長い時間がかかりますけど、どんどんいろんなことに挑戦していってもらいたいですね。

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