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【しごとコレクション】
自分に合いそうな仕事・興味の湧く仕事を集める
歯科衛生士
たどころ まみ
田所 真実さん
22歳・日立第二高等学校出身
- 3次産業
- Border Vol.4
- 医療
- 女性
- 歯科衛生士
- 茨城県北
歯科衛生士には、患者さんの歯医者に対する恐怖心をなくし、不安を和らげる役割がある。
取材者からの紹介
「女性として第一線で輝きたい」という思いを胸に、この仕事を選んだ田所さん。常に笑顔でとても明るく、親しみやすい印象の持ち主です。インタビュー中も楽しそうに話をしてくださる田所さんから、毎日生き生きと働いている姿が想像できました。趣味は、祭りでおみこしを担ぐこと。驚くほどアクティブな一面も持ち合わせた女性です。
体を動かして人の役に立ちたい
高校生の頃はバレーボール部に所属し、朝から晩までバレーボール漬けの日々でした。とても厳しい部活だったので大変でしたが、そこで目上の人に対する態度や忍耐力が身に付きました。これは部活動をしていなければできなかったことだと思います。勉強をするのはテストの前くらいでしたね。
私はもともと体を動かすことが好きだったので、将来は事務系の仕事でデスクワークをするよりも、体を動かして人の役に立てる仕事がしたいと思いました。私が小さい頃通っていた歯医者さんに大好きな歯科衛生士さんがいました。その方は明るくて優しくて、仕事もできて、誰からも好かれて...。その方への憧れから、歯科衛生士の仕事に興味を持ちました。歯科衛生士は女性でも第一線で仕事ができると思ったんです。
コミュニケーションも大切な仕事
歯科衛生士の仕事は、歯科医の治療のアシスタントにつくことはもちろんですが、患者さんの虫歯を予防することも大切な仕事です。私が働いているクリニックでは、先生が診察する時間の他に歯科衛生士が診察する時間が30分設けられています。その時間では、患者さんの口の中をお掃除してきれいな状態を維持してもらうために、歯磨きの基礎を教えたり、患者さんの口の中を写真に撮って状態の変化を見たりもします。
また、患者さんとのコミュニケーションも大切な仕事の1つです。たとえば、先生の治療を待つ間ずっとシーンとしていて、まわりからはキーンという治療する音が聞こえてきて...、そして隣に無言で歯科衛生士が座っていたら、きっと患者さんは不安になりますよね。恐怖心を持ったまま治療を受けて、嫌な思いをされたまま帰られる患者さんを見るのは寂しいです。歯科衛生士には、患者さんの歯医者に対する恐怖心をなくし、不安を和らげる役割があると思うので、患者さんと楽しくお話し、少しでも不安を和らげられるように努めています。
何を話したらいいのか
働き始めた頃は年齢の近い方とは気軽にお話できたのですが、年が離れた方とは何をお話したらいいのか分からず、とても悩みました。学生の頃は同年代の人としか話さなかったし、学校に行って勉強していればいいという受け身の姿勢でした。でも、仕事では苦手なこともやらなければならないので、先輩と患者さんの会話を聞いたり、先輩に「患者さんとはどんなことを話しているんですか?」と質問したりして会話のコツをつかめるよう努力しました。その日患者さんとお話したことを振り返って、盛り上がった話題は次の日にも話したりしましたね。
最初の半年はだいぶ苦労しましたが、今はもう大丈夫です。定期的に通院されている方は患者さんの方から話しかけてくれますし、初診の方とも以前よりにこやかに話せるようになりました。最近は、患者さんとの共通の話題をつかむために、普段からニュースをチェックしたり、日曜の朝に早起きして子ども向けのテレビ番組を見たりしています。患者さんの年齢層は幅広いので、旬の話題を把握することはもちろん、アニメや戦隊ものの知識も必要なんですよ。
大切なのは笑顔と優しさ
患者さんに常に笑顔で接することは大切ですね。私は小さい頃、歯医者が嫌いだったのですが、優しく笑顔で対応してもらって安心した経験があるので、自分でも常に心がけています。何かを真剣にやるとき以外は自然とにこにこしてしまうんですけれどね。
また、患者さんに丁寧に説明をして安心してもらうことも大切ですね。治療後にレントゲンを撮って患者さんにお見せして、「今回はこういう治療をしたので、次からはこうなります」というように治療の内容を1つひとつ説明しています。通院する理由がわからないと不安になると思いますので、治療を納得してもらえるように心がけています。
私が関わったことで患者さんの虫歯がなくなったり、真っ赤だった歯肉がきれいになったりすると、とてもうれしいです。私も学生の頃はそうだったのですが、日々の歯磨きは大切だけれど、面倒くさいと思うこともあると思うんです。でも、頭ごなしに注意されると反発したくなりますよね。だから、「嫌だとは思うんですけれど...」とまずは患者さんの気持ちを尊重して、歯磨きに慣れてもらうことから始まり、徐々に歯間ブラシやフロス(歯間掃除用の細い糸)を増やしていくなど、患者さんにあったやり方を勧めていきます。毎回口の中の写真を撮って比較して、前回よりも良くなっていると手ごたえを感じますね。いくら私が指導しても、患者さんが歯磨きをしなかったら成果は出ませんので。だから、「私の気持ちは一方通行じゃなかったんだ」と思ってうれしくなりますし、これからも頑張ろうと思えます。
社会に出ても勉強は必要
専門学校で基本的な技術は学ぶのですが、それだけでは仕事はできません。たとえば、インプラント(人工歯を埋め込むこと)は、基本的な技術は学校で教わるのですが、歯医者によって使う薬品や方法が違うので、そのクリニックでの技法を身につけることが必要です。それに加えて、今は医療がどんどん発達しているので、導入される新しい技術や道具にもついていく必要がありますね。それらに対応するために、社会に出てからも自分で勉強することが必要なんです。私も歯科衛生士の講習会に参加したり、毎月発刊される歯科衛生士の本を読んで勉強したりしています。新しく習得したことを最初に患者さんに試すわけにはいかないので、模型を使ったり、家族に協力してもらったりもしています。一人ひとりの口の中の汚れの付き方や歯並びはまったく違うので、どんな患者さんにも納得してもらえる診察ができるように、もっと勉強して、自分なりに技術をアレンジできるようになりたいです。
働くことは学ぶこと
私が高校生の頃にイメージしていた「働く」ことと、今の現実は違います。高校生の頃は、働くことは義務だと思っていました。「働かなくちゃいけないんだ」と。でも今は、働くことは学ぶことだと思っています。仕事をする上で先生や先輩に色々なことを教わりますし、患者さんとお話をする中で学ぶこともとても多いです。学校での学びとはまた違うんですけれどね。仕事をしていてとても楽しいです。
今後はもう少しスムーズに仕事ができるようになりたいです。そして、新しい知識を吸収していきたいと思っています。今はインターネットが普及していることもあり、患者さんも多くの情報を持っていて、患者さんに質問されることがとても多いんです。待合室に置いてある本を読んでいらっしゃる方も多いですし、歯に対する意識が高い患者さんがたくさんいらっしゃいますね。私は患者さんからの質問に対してきちんと答えられなくてはいけないと思いますし、幅広く理解していなければと思います。そしていつかは、技術面も優しさも兼ね備えた、私の憧れての衛生士さんのようになりたいです。
先輩上司から一言
僕らの仕事はプロフェッショナルな仕事で、そこに来る患者さんを幸せにしましょうという職業なんですよ。例えば、「ありがとうございます」は、お金をもらうほうが言いますよね。でも僕らの仕事は、お金を払いながら「先生、ありがとうございます」と言って頂けるんです。だからまず、患者さんの幸せを一番重視して考えるということが非常に重要ですね。報酬は2つあって、一つは物理的な報酬の給料、もう一つは精神的な報酬。それは患者さんに感謝されるということ。本当に一生懸命やってその人から感謝されたときの充実感が働くということの大きな意味をなすことかなと。何でもいいんだけど、仕事をやって、それがどういうふうに役立って、それに対して誰がどう喜んでくれるのかが見えてくると、面白くなってくる。どんな仕事でも面白くなってくると思うんだよね。