2ch
【しごとコレクション】
自分に合いそうな仕事・興味の湧く仕事を集める
漁師
かとう さとる
加藤 聡さん
27歳・那珂湊第一高等学校出身
- 1次産業
- Border Vol.4
- 漁師
- 漁業
- 男性
漁は半端な気持ちではできない。必死でやって、魚が網に入った瞬間が何とも言えない。
取材者からの紹介
紆余曲折を経て父親と同じ漁師になった加藤さん。からっとした海の男らしい性格が伝わってくる方でした。「今の仕事が天職」と、事も無げに言えてしまう姿がとても羨ましく感じました。自分が楽しいこと、やりたいことができる自分に正直な人という印象の方でした。
やっぱり漁師がいい
家は代々、漁業関係の仕事をしていて、父親も漁師です。子どもの頃から夏休みにアルバイトみたいな感じで年に何回か船には乗せてもらってました。
最初は高校を卒業して、スーパーに就職したんです。だけど駄目でした。毎日同じ仕事の繰り返しのような気がして、やりがいを感じられなかったです。鮮魚コーナーで2年くらい働いてたんですが、魚をおろして、「いらっしゃいませ」って言って売るのは俺には合わなかった。辞めるのは辞めるので、苦しかったです。でも、「もうやりたくないから、何としても辞めよう」と思って辞めました。
その後は東京に行って、のらりくらり遊んでました。その時は漁師になるとは考えてなかったです。
そして、5、6年前に東京から戻ってきて、漁師になりました。
親は反対したんだけど、無理やり乗った感じ。親には「子どもと2人でやってみたい」って気持ちと、苦しみを知ってるから「やっぱりやらせたくない」という気持ちがあるみたいです。俺だって自分の子どもが大きくなったら一緒にやりたいけど、やらせたくないような気もする。「やりたい」と言われたら嫌だとは言えないけど、「やれよ」と誘うのは縛っちゃうみたいで、可哀想。安定してればいいけど、安定しない時が大変な仕事だから。
寝ずに海の上
船は大体一家に1台。俺はおやじと二人で乗ってます。いつかはその船を受け継ぎたい。メインで獲ってるのはシラス。網をシラスの群れの周りに円を描くように張って、船で巻き取っていくんです。巻き取って円をどんどん小さくすることでシラスを追い込んで獲ります。シラス以外は、ハマグリとか、タイとか、フグ。網で獲ってるとシラス以外の魚もいっぱい入ってくるんです。売れる魚が獲れたら売ります。でも自分で食べたりもしますよ。
朝起きる時間は時期によって違うけど、大体5時くらい。早いときは1時とか2時。漁ができる時間帯が決まってて、その時間内でしか魚を捕っちゃいけないんです。
5時過ぎに船に乗って出港。大体11時過ぎくらいまで海の上です。魚を獲って帰ってきて、漁の道具を直したりして、その日の仕事はおしまい。早いときは1時とかに終わります。
漁場は茨城県全域。県内だったら何処へ行ってもいいんです。大洗から日立の方とか、北茨城まで行くこともあります。県境のぎりぎりまで行きます。
生活リズムは朝晩が早いだけで、他の仕事の人とそんなに変わらないかな。年配の人になると8時、9時には寝ちゃうけど、若い人は11時とか12時くらいに寝て、5時に起きる。漁が早いときは寝ないこともある。でも若いときはそれでも体力的に問題ない。寝ないで海の上に出ても全然大丈夫。
休みは日曜日と祭日。あと、海が荒れている日。だから漁に出るのは年半分ぐらいですね。もう半分は休み。あと、1月は禁漁なので1ヶ月半くらい休みで、遊びみたいなもんなんです。でも本当に遊んでるわけじゃないよ。道具付けたり、そういう仕事はしてますね。
おやじの勘
漁に出ても、駄目なときは早く切り上げて帰ってきます。粘っても捕れない魚もいる。そういう切り替えをどこでするかがすごく大事です。
マニュアルなんて無いから、何でも勘。どこに魚がいるのかとか、そういった勘はまだ身に付いてないですね。魚がどこにいるのか謎のままで終わるときもある。魚群探知機があっても、それだけじゃ探しきれないしね。レーダー通りに行っても、同じところにいるということはない。魚も動いていますから。
やっぱり先輩の漁師とかおやじの勘はすごい。いっぱい獲ってくるし、いる場所もわかってる。まずそこを超えないと、と思います。とりあえずはおやじが目標です。多分、なかなか超えられないと思うけどおやじはすごいです。何だかんだ言ってすげえ。そういうのを見ていて憧れる部分があるから、自分も漁師になったし、今も続けてるんです。
海の上では勝負
漁師の仕事は体力勝負です。でも体を使ってると、気持ちいいよ。お酒がおいしいし。
漁は半端な気持ちではできません。海に落ちたり、網を巻き上げる機械に巻き込まれたりして怪我をするし、酷い時は死んじゃう人もいる。海の上に行けば、自然とモードが切り替わります。必死でやらないと危険です。だからこそやりがいは相当ありますよね。必死でやって、魚が網に入った瞬間が何とも言えない。
うちはおやじが船頭さんだから、俺は船の舵を持ったことはまだないです。持ちたいと言えば持たせてもらえるんだろうけど、おやじと同じ様にはできない。プレッシャーに押しつぶされます。1回だけやったけど、変な汗かいちゃって、もう持ちたくないなと思った。漁に集中して飯食うのも忘れます。「やべえ、あの船はあんだけ魚入ってるのに、こっちは半分も入ってねえ」みたいな。
漁に出たからには一番多く獲って帰ってきたい。そう思わないなら、漁師はやらないほうがいい。沖ではみんなライバルだから。「俺が一番になるんだ」っていう気持ちがないとね。網が破れて困った時はみんなで助け合ってますけど、漁の時はいつも勝負です。
でも結構、心が折れるときは早くて「今日は駄目だ」ってなるときもある。気持ちを維持するのは難しいです。
不安定でも天職
漁は安定しないから、獲れすぎちゃったり、全然獲れなかったりする。獲れすぎちゃうと、その分魚の値段は下がっちゃう。疲れるだけでうれしくないです。自然まかせだから難しい。とにかく保障がないのがすごく不安ですね。自分たちで魚の値段を決められるわけじゃないですし、原油高になると相当大変です。燃料費だけで月40万、50万前後かかります。漁に出れば出るほど赤字になる様なときもあります。でも、「やっぱり前の職場にいればよかった」とは思わない。自分に合わない仕事やっててもつまんないですもん。生きてて楽しくない。やっぱり自分に合った仕事のほうがいい。安定よりも、楽しいと思える仕事をしたほうがいいと思うな。なかなか見つけるのは難しいと思うけど。自分にとってこの仕事は天職だと思います。他の仕事は多分できないでしょうね。務まらないでしょう。船に乗ったら、船の人間になっちゃいますから。
おやじを超えたい
自分は、食うために働いています。自分の生活を維持するため。やっぱりそこに行き着くんじゃないですかね。食えなきゃしょうがないと思います。
目標はやっぱりおやじですね。とりあえずおやじに近づいて、ゆくゆくは超えていきたいです。自分で船も動かしたい。ちっちゃい目標だけどね、おやじなんて。でも、永遠に超えられないかもしれない。いつか年寄りになって、勝ったって喜ぶときが来るのかな。そう言えればいいけど。でもやっぱり、追い付くことはできても追い越せないかもしれないですね。それでも追わずにはいられない。結局は、永遠に追っていくんです。自分もどんどん成長していきながら。
先輩上司から一言
最初は何もわかんないじゃない。そういうのをわかりやすく教えるようにしてる。船の人って仕事を早くしろって、結構言うのよ。そういうのは絶対無理だから、急がせないで、徐々に覚えてもらうようにしてる。
先輩上司から一言
彼は「いやだ、いやだ」って言ってもちゃんと仕事をやるところは偉いね。手伝ってくれとか言われればちゃんと手伝うし。文句は言うけども、やることはやる奴ですね。