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【しごとコレクション】
自分に合いそうな仕事・興味の湧く仕事を集める
高校教諭
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- 高校教諭
自分ができないことを生徒たちに言うことはできません。だから、自分が実践している姿を生徒に見せるということを大切にしています。
取材者からの紹介
生徒への愛情にあふれた優しい表情が素敵な先生。その一方で、教師としての自分の信念を貫く強さを持ち、一本筋の通った凛とした姿がとても印象的でした。勝負師として味わった勝つ喜び、負ける苦しみがあるからこそ、どんな時でも生徒たちと真っ直ぐに向き合っていけるのだと思いました。生徒たちとの思い出をうれしそうに語る姿を見て、インタビューをしている私も幸せな気持ちでいっぱいになりました。
高校教諭になることを決意
「おまえの特技は剣道だ。剣道のおかげで苦しいことも乗り越えられる。特技は身を助けるものだから頑張って続けていきなさい」──。高校3年生で大学進学を考えていた時、当時の剣道部の先生から言われた言葉が、今でも私の心に残っています。
先生は本当に私の性格を分かっていて、叱るところは叱り、褒めるところは褒めてくれました。高校の恩師に限らず、私は剣道を通して多くの素晴らしい先生たちに出会うことができました。
先生たちから教わったことを、今度は自分が生徒たちに伝えたい。部活動で剣道を教えながら、生徒に影響を与えていきたい。その思いから高校教諭になることを決意したんです。
学生時代は剣道一色の生活でした。剣道を本格的に始めたのは小学生の時です。中学、高校そして大学と剣道部に所属し、剣道歴は21年になります。
高校は剣道の強豪校に進み、朝から晩まで練習に明け暮れました。寮に入っていたので、洗濯や掃除もすべて自分でやりながら、月1回の実家への帰省を励みにして学校生活を送っていました。
与えられたことは一生懸命やるんだ
小学校教諭と比べて、高校教諭は自分の専門教科以外の指導を行わないので、クラスの生徒と過ごす時間は短くなってしまいます。限られた時間の中で生徒との信頼関係を築かなくてはいけないことが、高校のクラス担任の難しさだと思います。
クラスでは、笑顔で和気あいあいとした雰囲気をつくり、生徒との距離を近づけていくようにしていますが、自分の思いが生徒に上手く伝わらないことも多く、その悩みは尽きません。生徒の人数も多く、私一人では目が行き届かないので、クラスのことに関しては同じ学年の先生やベテランの先生に相談しながら対処していくようにしています。
色々な先生に相談して、アドバイスをいただきながら、先生同士で協力して、指導にあたっています。私がいないところで、他の先生方が生徒に働きかけてくれていて、先生方の助けでクラス担任を務めることができています。
体育の授業では、体育の嫌いな生徒もきちんと授業に参加させるように指導しています。ジャージの着用と、授業の最初と最後に行う礼の整列は徹底させています。好きなことだけしかやらない生徒が結構いるので、「どんなことでも、与えられたことは一生懸命やるんだ」ということを伝えるようにしています。その一方で、生徒にわかりやすい指導をするため、指導法の勉強は欠かしません。苦手なバレーボールの指導をした時は、教本(指導者のための教科書)を読みながら陰ながら練習して、生徒にわかりやすく教えられるように努めました。バレーボール部の顧問の先生にも相談し、「まずは球を上げることが大事」と教わったり、生徒のボールへの恐怖心がなくなるように、ソフトバレーボールでバドミントンのネットを使って練習させたりするなど、様々な方法を考えながら指導しています。
別の角度から向き合うこと
剣道部では技術だけでなく、礼儀やあいさつに対しても厳しく指導をしています。道場は生徒にとっても、私にとっても別世界であるように、緊張感のある空気を作っています。道場ではニコニコした表情を見せません。
指導の中では、生徒の顔つきを見ながら分かるまで話をします。生徒の理解度に合わせて、同じ内容を様々な角度から話をするように心がけています。
それでも伝えたいことが上手く伝わらず、生徒との関係やいろんな悩み・疲れも重なって「もう駄目だ」と気持ちが折れそうになることもありました。その時、あえて黙って生徒たちの様子を見ていたんです。そうしたら今まで口に出して怒ったり話したりしていた時には気がつかなかったものが見えて。生徒が下級生に教えている姿や、見えないところで真剣に練習する姿に気づいたんです。生徒と別の角度から向き合うことの大切さを知りました。そうやって試行錯誤しながら長い時間を一緒に過ごす中で、自分の思いが生徒に伝わり、生徒との信頼関係を築けた時は本当に嬉しいですよ。
ここで築いた生徒との関係
私が剣道の大会に出場した時、生徒がピンクの手ぬぐいをプレゼントしてくれたことがありました。「無心」と書かれた手拭いに寄せ書きで、「頑張ってください」や「応援しています」などのコメントが書かれていて。その時は、驚いて涙ぐんでしまいましたよ。生徒の思いが嬉しくて、かわいくて。
ここで築いた生徒との関係は、生徒が卒業した後も続いています。毎年8月に行う合宿には卒業生も顔を出して、近況を報告してくれます。「剣道部で先生の指導に耐えられたから、どこへ行っても大丈夫」と聞いた時は、教師をやっていてよかったと思いました。
生徒のことを諦めない
教師と生徒の心のぶつかりあい、それがこの仕事だと思います。ですから、どんなことがあっても生徒のことを諦めない、絶対に見捨てないというのが教師としての私の信念です。「生徒ができないなら、できるまで一緒にやる」という気持ちを常に持っています。
また、初めて教師になったときに抱いた「生徒のことを一番に考える」という気持ちを忘れないようにしています。自分が悩んでいたり、不安を感じていたりすると、それは全部生徒に伝わってしまうんです。生徒との関わり方や指導方法を日々考えなおし、悩むことも多いですが、生徒の前では悩んでいる姿は絶対に見せません。
師弟同行
教師として生活する中で、生徒に自分の思いを伝えることの難しさをよく感じます。しかし、言葉で伝えるだけが指導ではないと思っています。
「師弟同行」という言葉を校長先生から教えて頂きました。「先生の姿を生徒は見て、生徒の姿を先生は見る。見られているという意識を常に持つことで生徒を成長させる」という意味です。自分ができないことを生徒たちに言うことはできません。だから、自分が実践している姿を生徒に見せるということを大切にしています。言葉で厳しく注意する前に、私がやっている姿を見せ、生徒たちが「あ、こうやってやるんだ」と思う。言葉に表さなくても、生徒に何かを感じ取ってもらえる教師というのはすごいと思います。
教えるだけでなく、生徒から教わることも教師として大切にしています。周りの先生から教わるように、生徒からも多くのことを教わりました。私の信念にもある「諦めないこと」は、生徒たちから教わったことです。諦めないで私を信じ、自分自身を信じ、頑張る生徒がいる。その姿を見て、『諦めないこと』を教えられました。
生徒のひたむきな姿を見て、自分の態度を改めさせられ、自分に喝を入れ直しています。生徒の成長と一緒に、教師として自分自身も成長できる関係を目指しています。
先輩上司から一言
新任の先生は、生徒全員を自分一人で見ようとして、一生懸命になります。自分の言っていることに共感してもらいたい、感動してもらいたい、目を向けて欲しいという思いが強いんです。教師という仕事に理想を抱いて教壇に立ちますが、1年目の研修で受けてくること(現実)と理想とのギャップがどうしてもあります。それを解消してあげるのが私たちの役割ですね。
彼女は一生懸命。絶対に手を抜かない。自分のすべてを出し切りたいという気持ちをとても強く持っています。経験は財産になるので、今できることを精いっぱいやって、次を育てていく先生になってほしいですね。その中で、どう教えていくか自分なりのやり方を見つけてほしいですね。