2ch
【しごとコレクション】
自分に合いそうな仕事・興味の湧く仕事を集める
文化施設事務職員(総務係)
ふじい しょうこ
藤井 祥子さん
24歳・竹園高等学校〜筑波大学出身
- 3次産業
- Hope Vol.5
- 女性
- 文化施設事務職員
- 茨城県央
- 複合サービス
仕事を通して社会とつながりを持つ
取材者からの紹介
小学生のころに始めた吹奏楽を今でも続けられている藤井さん。昔から音楽や絵といった芸術分野に興味関心があり、吹奏楽の他にも、学生のころから美術の展覧会などに良く足を運んでいるそうです。美術館の中でも総務という仕事を通して、また違った方向から間接的に芸術に関わっている藤井さんのお話は、私自身が芸術に興味があることもあって、多くのことを考えさせられました。
「やっぱり、やりたいことをやろう。」
私は今、水戸芸術館の事務局の総務係というところで仕事をしていますが、去年まで自分がこの仕事をやるなんて想像もつきませんでした。私は絵や写真が好きで、学生のころは作品をつくることや、美術の展覧会を企画するといった直接美術に関わる仕事に興味を持っていました。けれど、大学生のころに参加したアートマネジメントの授業や、先生の下でやっていたワークショップ運営のお手伝いなど、様々な体験を通して、次第に美術の世界を支える裏方の仕事の大切さを感じ始め、そのような仕事に興味を持つようになりました。
就職活動をしているとき、一度は一般企業に就職することも考え、民間企業を何社か受けたんですが、全部落ちちゃったんです。そこで思い切って就職活動を辞めて、一度自分を見つめ直し、「やっぱり、やりたいことをやろう。」と思い立ち、アルバイトからでもいいから、芸術にかかわるところ、例えば美術館のような文化施設や画廊での仕事を見つけようと決心しました。日本全国の美術館の求人を探して、偶然にも水戸芸術館の募集を見つけたんです。大学の卒論提出の前日が就職試験だったので、死にそうになりながら試験を受けました(笑)晴れて合格をいただいて、今この仕事に携わっています。
アートマネジメントは芸術を社会化する仕事
私たちの財団は、水戸芸術館の運営に関わるアートマネジメントの仕事をしています。アートマネジメントとは一般的に芸術を社会に広め支える仕事を指します。芸術に興味がない人でも踏み込めるようなプログラムを作ることや、またそういうことに従事する人の支えをすることが例として挙げられます。芸術を芸術の世界だけで捉えず、外界に広がる様々な関係性、例えばアーティストや鑑賞者との関係、また市や国などの行政との連携についても考えることで、社会全体を動かしていく「芸術を社会化する仕事」と言っていいと思います。その中で私は、「支える側」のスタッフとして総務係を担当し、芸術館で働く方々の給与計算や社会保険の手続きを行っています。アートとは少し遠く、少し堅い仕事です。
一つのことに凝り固まらず、色んなものに興味を持つ
給与計算で数字がぴたっと合って、間違いなく計算できたときは楽しさを感じることもありますが、それ以上に、裏方の動きを見るのがすごく面白いです。新しい美術展や公演の準備をしているときに、準備のスタッフさんが慌ただしく動いているのを見ると、「自分もがんばろう」と張り合いを感じます。
総務係になってよかったなと思うことは、給与や保険の手続き以外にも、音楽・演劇・美術三部門の仕事を、幅広く手伝うことがあって、今まで好きだった芸術という分野を俯瞰して見られるようになったことですね。美術や音楽が好きでそればかりやってると自分の殻に閉じこもっちゃうので、一つの視点に凝り固まらずに色んな角度からの視点を持てたのが良かったです。
最近、芸術分野以外のものにも興味が湧きやすくなったことに気付きました。何でかなと考えると、やはり仕事の影響があると思います。例えば他業種についてのドキュメンタリー番組を見るとか、外の世界の様々なものに興味を持つようになりました。
自分の好きなものを一緒に楽しめること
自分の好きなものを他人に理解してもらえないと残念な気分になることってありますよね。アートマネジメントの様な芸術の下支えの仕事をしようと思った理由として、そのことも要因のひとつだと思います。昔は、休みの日に美術館を巡ったり、音楽を聴きに行ったりするときは、一人の場合がすごく多かったのですが、今の仕事に就いてからは展覧会に行くときには、あえてあまり興味がなさそうな人を誘って一緒に見に行きます。
自分の好きなものを他人に押し付けるのではなく、一緒に楽しめることが良いやり方の一つなんじゃないかなと思って、その感覚を忘れないようにしています。
他人のことを考える重要さ
仕事を始めたころは身構えてしまっていたんですが、仕事をこなしていくうちに、学生時代に経験したこととそんなに大差がないことに気付きました。期限や責任義務がはっきりとあるという点では、学生のころと比べると違いはあるんですが、常識的に順序良く考えればできるんだと感じます。
けれど、一人の仕事は分担されているなかでも、それぞれの仕事は他のスタッフと相互性を持っているので、自分ができないと他のスタッフに迷惑をかけてしまいます。私は割とぼんやりしてるので、自分の仕事を終わらせたら終わりだと思ってしまうときがあって、時々怒られてしまうことがあります。仕事をしていると、他人のことを考える重要さがとても感じられますね。
居場所があることは幸せなこと
仕事とは、自分が何かしら役に立ちながらも、そのかわり居場所をもらえることだと思います。就職活動やめたときにつらかったことは、仕事がないということより、「四月からの自分の身の置き所が分からない」ことでした。これから何をするか、どこにいるか、どういう状態なのか分からないことが怖かったですね。
芸術館に就職が決まって、初めて研修で来たときに、もう名札が用意されていたんです。そのことにすごく感動して、すぐに写真を撮っちゃいました(笑)。ロッカーにもちゃんと「藤井」って名前が書いてあって、ついこの間まで本当に一人さまよう運命だったのが、居場所を持てた実感が湧きました。居場所はあるというのはとても大事ですね。それは幸せなことだと思います。
家族や友達や恋人といった、居場所はたくさんあると思うんですよ。でも、それらとは違う形で自分が機能できる場所が必要だと思います。社会の歯車になると言ったらすごい恐ろしい言い方ですけど、仕事を通して社会とつながりを持つことは大切だと思います。
先輩上司から一言
うちでは、ホール・劇場・ギャラリーの三部門で活動しているので、それぞれの部門とのつながりを大切にしながら、そこの職員にレクチャーなどをしてもらいながら研修をしています。彼女の魅力で一番感じるのは勉強熱心なところですね。自分から書籍とかを読んで研究して実務に役立てているというところなので、私みたいな直属の上司とかが「これをこうすれば」と言わなくても、自分から学んで解決していくということが素晴らしいなと思っています。藤井さんは誰からも好かれ、誰にでも溶け込んでいく感じの人なので、今は総務の仕事を担当していますけど、これからまだまだ先は長いので、いろんな係の仕事を経験して、芸術館の事務局をしょって立つ人材になってほしいと思っています。