しごとCHANNEL365【シゴトチャンネルサンロクゴ】

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【しごとコレクション】

自分に合いそうな仕事・興味の湧く仕事を集める

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養蜂家

ながしま てつや

長島 哲也さん

26歳・中央高等学校〜流通経済大学出身

  • 1次産業
  • Hope Vol.5
  • 男性
  • 畜産農業
  • 茨城県央
  • 養蜂家

本気でやりたいという気持ちがないと続かない。強い意志を持ってやるだけ。

取材者からの紹介

サラリーマンを辞めて養蜂家になられた長島さん。決して楽ではないし、生半可な覚悟ではできない職業ですが、養蜂家という仕事にとてもやりがいを感じてやっている姿が印象的です。後継者不足や高齢化が問題となっている農業という分野に、20代という若さで自ら飛び込んでいった姿は、これから新しく農業に関わろうと思っている人たちの目標となることでしょう。

「蜂ってすげぇな」って感じた

養蜂家になる前はサラリーマンをやっていました。薬局相手に健康食品の飛び込み営業です。初の社会人なので色々と苦労しましたし、大学のときとは違いプレッシャーがあり、仕事をしていく内に「一生の仕事として続けられない」と感じて辞めました。でも直接人と接する機会が多い営業職は、これからの人生においても良い影響を与え、成長させてくれた仕事でした。辞めた今でも前職の上司や取引先の人とお付き合いもありますし、前の仕事に就いてよかったと思いますね。

それで新しい職を探しているときに、中学校時代の先輩が農業をやっていて、その人に「農業なんてどうか」と声をかけられたんですよ。農業も悪くないかなと思って図書館でいろいろ調べていました。そこでたまたま「養蜂家」という職業を見つけて、この仕事に興味がわいたんですね。さらに詳しく養蜂について調べて、養蜂家の仕事や蜂の性質を知るにつれ「蜂ってすげぇな」と感じるようになっていきました。そこから、先輩に浅川養蜂場の浅川さんを紹介してもらい、弟子入りする形で養蜂の仕事に携わるようになりました。

新しく養蜂を始めたころは、周りから「勉強とか大変じゃないのか」って良く聞かれたんですけど、それよりも体で覚えていったことが一番多かったですね。本を読みながらできるような仕事じゃないし、やっている人を実際に見ながらじゃないと何もできないから、結局弟子入りしてくっついて教わるしかなかったんですよ。

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高校卒業の日、友人と『祝』のポーズ。(後列右)

「蜂を貸し出す」という仕事

僕のやっている仕事は、「養蜂家」というんですけど、イチゴやメロン、他にもナシ、リンゴ、スイカといった作物の花粉を交配(受粉)するために、「蜂を育てて貸し出す」という仕事をしています。僕たちは「リース」と言いますが、蜂のレンタル屋さんみたいなものですね。茨城県はイチゴやメロンなどの作物をつくる園芸農家が多いので、蜂が花粉の交配で活躍する場面が頻繁にあって養蜂家が重宝されているんです。恐らく他県では、養蜂といえば「採密」(蜂蜜を採取するために蜂を育てている)が主流になっていると思いますが、茨城県では違うんです。

世間では蜂が花粉交配で使われるというイメージは全くないですね。この養蜂場には小学生が見学に来ることがあるんですが、小学生に養蜂のイメージについて聞くと「蜂に刺される」「蜂蜜を作っている」以外は何もない。そればかりじゃなくて「園芸にも役に立つんだよ」と言うと、感心するんですよね。

生き物を相手に仕事をしている

この養蜂場にお世話になってまだ二年ですが、最初は蜂に刺されることがつらかったですね(笑)。顔を刺されて変形してしまうくらいパンパンに腫れてしまいました。けれど、何度か刺されているうちに慣れてくるし免疫ができてきて、刺されてもそこまでは腫れなくなりました。2~3日で治ってしまいますね。それに最近は刺されること自体が少なくなりました。この仕事をしていると自然と蜂の匂いが身体に染み付いて、蜂の警戒心がなくなってくるんです。最初のころは蜂に対しておっかなびっくりで、正直、近寄りたくないと思っていました。それが蜂に伝わってしまい、蜂の警戒心も高くなってしまうんですよ。でも、しばらくやってると蜂に慣れますね。刺されるとやっぱり痛いんですけど、これが仕事だと思って割り切れるようになりました。

休みの日は、自分で「今日は休みにしよう」と思ったら休みにできますが、晴れの日は蜂の手入れや農家さんへの貸出があって休めないので、どうしても休みの日は雨の日になっちゃいます。朝早いときは五時ぐらいから動きだして日が落ちるぐらいまでは仕事をやっています。自分が休んだら休んだ分だけ仕事は全然進まないし、やったらやった分だけ成果が出るというようにどうしてもなるので、うまく自分で調整しています。休まないと体がまいっちゃいますしね。

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蜂が急に箱を開けて、ビックリ!!

ただお金が稼げるとかじゃなくて

県内で養蜂家をしている20代は僕しかいないです。養蜂家の平均年齢も67歳と言われていて、後継者不足については、現在ある農業と全く一緒の状況ですね。

農業もそうだと思うんですけど、どうしても自分たちしか食べていけないことがあります。時給にすると数百円という世界です。そんな状況で結局やりがいがなかなか見いだせない人が多いんだと思います。ただお金が稼げるとかじゃなくて、自分やりたくてこの仕事をしていて「やっててよかった」というやりがいとバランスが取れて、農業で飯が食っていける状況を作り出せれば、農業の分野に若い人がどんどん入ってくるんじゃないかなと思います。僕が成功すればこれから若い人が入ってくるかもしれませんしね。

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寒くて蜂さんも押しくらまんじゅう。

自分がいなきゃ農家さんが困る

やりがいはとにかくあります。やっぱり、お金じゃ得られないものが得られますね。今、全国的に蜜蜂がいないので、一生懸命蜂を育てて、園芸をやっている方に喜んでもらえると、とてもやりがいを感じます。「自分がいなきゃ農家さんが困る」というところやりがいを感じる要因のひとつですね。農家さんに、「養蜂家がいないと駄目だから頼むよ」って頼まれたりすると嬉しくなります。

農家の人と取引していて「若い人が入ってよかった。これからもよろしくね。」なんて言われると、頑張らなきゃと思いますね。特に若い人がいない分、若いこと自体が武器になります。もちろんプレッシャーもありますけど、いい意味で自分は期待されてるのかなと思っています。

僕みたいに、農家に弟子入りをして農業に携わるというのが、これからは農業を始める一つの形になっていいと思います。ただ、本気でやりたいという気持ちがないと続かないので、強い意志を持ってやるだけですね。

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これからも蜂と共によろしくお願いします。

先輩上司から一言

彼は養蜂について自分で調べてこの世界の門を叩いてきたんですよ。茨城県でも後継者が少なく、「後継者を育てるのも大事」と思って私は拒否しませんでした。養蜂をやることで農家さんが喜んでくれるようなものがあったもんですから、駄目だとかそういうことは言えないもんで(笑)。希望を持つのはこれからですよ。彼がこれからやっていくという精神を持っていかないと駄目になっちゃいます。それは本人自身の問題なので、私らが何だかんだ言うよりは、彼本人の覚悟ですよ。本人自身が進んでいかないと育っていかないんですよね。

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