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【しごとコレクション】

自分に合いそうな仕事・興味の湧く仕事を集める

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畜産農家

すずき まさのり

鈴木 政紀さん

28歳・水戸農業高等学校〜県立農業大学校出身

  • 1次産業
  • Hope Vol.6
  • 男性
  • 畜産農家
  • 畜産農業

「いい牛作ってるね」といわれた時の喜び、夢は日本一の牛を育てる

取材者からの紹介

「ニコニコ笑顔」「金髪にキャップ帽」と、見るからに元気なお兄ちゃん。一方、仕事の話となると、真剣な顔つきに一変するところに惹かれました。自らの意思で、父の後を継ごうと決めてからは苦労の連続。日々、頭と体をフルに使って仕事をする姿から、「生きるために働く」という自身の言葉のリアリティを感じずにはいられませんでした。私も仕事の中にやりがいを見出せる社会人になりたいと思いました。

「お前は牛をやるな」畜産農家の仕事を継ぐ必要はないと親父に言われていました。最初は自分も「やりたくねえなあ」という感じ。天候や消費動向に大きく左右される不安定な仕事だし、体力勝負。小さい頃から親父を見てきたから、その苦労が良く分かっていたんです。でも漠然と、命を扱う仕事をしたいとは思っていました。実は自分、小学生のときに脳内出血で一度死にかけているんです。処置があと少し遅かったら間に合いませんでした。当時は何も考えていなかったんですが、成長するにつれて「やっぱ命ってすげえな」って。それで、畜産をやろうという気持ちになったんです。県内でトップクラスの牛を扱う親父の技術を無くしたくなかったですしね。高校に入った頃から気持ちが固まってきて、農業大学を卒業してから親父を手伝う形で仕事を始めました。でも実は、後継ぎをすると親父に面と向かっては言ってないんですけどね(笑)。

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中学時代、共に汗を流した球友と夏の甲子園出場をかけた県予選開会式で再会。(写真右)

基本的には朝晩の餌やりがメインで、同時に1頭1頭の体調管理もします。全部で350頭の牛を親父と2人でやるから結構大変。昼間は稲作や野菜作り、そして、牛の飼料作り。この飼料作りは一番手間がかかります。牧草・トウモロコシから自分たちで作る。トウモロコシは切断・密封して乳酸発酵させます。加えてビタミンなどの栄養も考えた粗飼料も欠かせない。今の飼料は、親父が長年試行錯誤してできたものです。牛も人間同様、バランスの取れた食事でないと良いものに育ちません。仕事はそれだけではありません。うちでは牛の繁殖もやっているので必要に応じて人工授精を施したり、出産に立ち会うこともあります。北海道に牛を買い付けに行ったり、岩手県に競りに行ったりもします。

この仕事は、天候や消費動向、景気に左右され易く、キロ単価で100円200円の変動は当たり前。それによって1頭の値打ちは5万も10万も変わってしまいます。需要が上がらなければ、ものが良くても買ってもらえません。特に今は、肉は贅沢というイメージが強いので敬遠されがち。肉より高いものや、単価で考えれば大差ない野菜や魚もあるのにね。かつて、焼き肉関係で夏に上がった需要も、年間通して変化が小さくなっています。でも世の中の動きだけはどうしようもないので、やれるだけのことをやるしかないですね。

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「牛を見る目」も鍛えなくてはいけない。競りは皆で牛を囲って、電光掲示板に自分の番号が出てくるまでボタンを押し続けます。牛の情報は性別と生年月日、種雄牛の名前のみ。血統と、その流れの組み合わせもしっかり把握した上で2年後を想定します。良い牛を見抜くには、まだまだ経験不足。これから数をこなしていくのみです。

出荷先に「いい牛作ってるね」と言われた時は嬉しいです。苦労して作ったものは評価されると信じています。高く買って頂いたときや、継続して注文がくる時は、評価を実感。それが原動力になります。農産物の直売所でも、うちの牛肉を販売していますが、消費者の方に直接褒められる時なんかは、本当に励みになるんですよ。

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感動するのは、子牛が生まれた時。出産の時は親牛も涙を流します。時間がかかる牛もいれば、ポッと産む牛も。一晩放っておくと子牛が死んじゃうこともあるので、夜通し様子を見て出産を手伝います。大変な出産では、産んだ後に体力を使い果たして立っていられない親牛もいます。そうなるまで一生懸命になって子どもを産むってすごいですよね。

以前、あまりにも難産で親牛が産むのを諦めて、死にそうになった子牛がいました。もう親には出産をする体力が無い状態。自分たちが子牛を引っ張って、瀕死状態から助けたことが思い出深いです。急いで洋水を抜き、自分で作ったミルクを飲ませました。親牛の命も助かったんでホント良かったですよ。学校での勉強や数々の読書、でも、実際にやってみるのが一番の近道。その意味で、親父や他の農家の人を見様見まねしていますね。

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仕事は生きていくためにやっています。生活できなければ希望ももてない。今って、結構簡単に仕事を変える人が多いですよね。頭ごなしに悪いとは言いませんが、辛いとか人間関係が上手くいかないとかいう理由は自分のエゴだと思います。仕事で苦労があるのは当たり前。結局は自分の仕事を真剣にどう捉えられるかが大切だと思います。

この仕事を始めてから、命の大切さを感じながらも、結局は牛の命を奪ってしまうということもありました。失敗も沢山。でもそれらを通して成長しているのかな。人の助言を聞き入れて感謝すること、金儲けだけじゃなくて、みんなから感謝され評価される良い牛を育てる喜びも分かるようになりました。今の目標は日本一の牛を育てること。年に一度、東京で日本一を決める大会があります。大会に出せるようになるまでが大変ですが、そこで一等を取りたい。それが夢ですね。

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