2ch
【しごとコレクション】
自分に合いそうな仕事・興味の湧く仕事を集める
技術者
あべ はるき
阿部 晴希さん
20歳・日立工業専修学校出身
- 2次産業
- Hope Vol.7
- 技術者
- 男性
- 茨城県南
- 製造業
この道を選ぶことで本気になることができた。技能五輪で学んだことを活かしていきたい。
取材者からの紹介
20歳とは思えないほど受け答えが丁寧な阿部さん。言われたことをきちんと受け止めコツコツと覚える力、忠実に再現する力が彼を世界一にしたんだなと感じました。世界一という名よりも、現場に出遅れたことの方がプレッシャーだと話す彼の向上心の強さには驚かされました。謙虚な姿勢と、働いてからも学びの連続だと考え、努力し続けることの大切さを彼から学びました。
工業を学ぶことを決意、早く働いて自立したい
中学卒業後は地元宮城を離れ、工業を学ぶことにしました。将来は安定した職業に就きたいと思っていたからです。大学進学も考えたことがありますが、親に負担をかけてしまうし、勉強するよりも早く働きたかった。お金を稼げるようになって自立したいと考えていたので、中学の先輩も進んでいたこの道を選びました。高校卒業までは、やりたい仕事がよく分からなかったのが正直なところですね。工場見学をしても実際にやってみないと分からないことが多いですし、これだけはやりたくないと思う仕事以外なら何でもやってみようと思いました。
大会に挑戦するチャンス、自分で選択した道
勤めているのは社会インフラ事業、例えば上下水道やトンネルなど人々の生活を支える設備に関わる大型産業機械を製造する事業所です。ですが実はまだ、私は現場に出て実際の製品となる部品をつくる仕事はしたことがありません。自分と同じ学校の卒業生は既に基礎技術を学んでいるので、そのまま現場に出るか、1年間技術の訓練をして現場に出るのがほとんど。しかし私は、技能五輪に挑戦するチャンスをいただいたので、2年間ずっと訓練を受けていたんです。技能五輪とは、ものづくりの腕を1種目一人または1チームで競い合うもの。朝は寮から出社し、ランニングと筋トレのトレーニングを終えてから、画面と向き合う訓練を夜まで続けます。
競技の種目は「CNC旋盤」です。CNCとは工具の移動量や移動速度などをコンピュータによって数値で制御すること。このCNC旋盤装置を用いて精密加工を行い、切削加工の精度や図面との整合性などの技能を競うものです。
高校までは可もなく不可もなくという感じで、何かに打ち込んで成果を残したわけではなかったので、技能五輪競技者になることに始めは乗り気ではありませんでした。先輩方を見ていて、精神的にも肉体的にも相当きついものだと思っていましたから…。ですが推薦というチャンスをいただいたので、最終的には自分で挑戦することを選んでいましたね。自分で選択した道なので「やるなら本気でやろう」と考えるようになっていました。私はもともと不器用で、ものづくりも得意なわけではなかったのですが、推薦という責任を感じながら一生懸命向き合ってきました。手先の器用さや体力だけではなく、頭を使うCNCの面白さが自分には合っていたんだと思います。
それ以上になるため仕事は真面目に
やりがいに感じたのは、出来なかったことが徐々に出来るようになることですね。競技は出来具合を点数で表すのですが、その点数が出なくなり、何をやっても上手くいかなくなった時は本当につらかったです。でも途中で投げ出したら、どんどん悪くなる自分を想像できたので辞めようと思ったことはありません。どこを伸ばせばいいか、“それ以上になるため”を教えてくれたのは指導員の方でした。分からないことを何度も聞きに行くことに始めはためらいましたが、覚えないと良い結果は出せないので、自分から聞きに行って教わるように自然となっていましたね。仕事は真面目に、言われたことは一度で覚えるように取り組んでいます。また言われたことはそのままにせず、「本当に合っているのか、もっといい方法はないのか」と自分で考えるようにしています。
「訓練」という仕事、悔しさからの決意
就職したらすぐに現場に出て、ものを作る仕事が始まると思っていたので、「訓練」という仕事はとても意外でしたね。1年目から技能五輪全国大会に出ることができたのですが、大会当日大きな失敗をしてしまって、とても悔しい思いをしたんです。1年目はそこまで結果に執着していなかったのですが、一生懸命やっていての結果だったので、「次は絶対に金メダルを取ろう」そう決意しました。それからはずっと、技能五輪の訓練優先の生活でした。しかし決意はしたものの、3年間同じことをやるというのはとても長く感じましたね。つらい思いをした分、3年目に出場した国際大会で「優勝」と自分の名前が掲示板に表示された瞬間は本当に嬉しかったです。
現場に出て働くこと、もっと会社に貢献したい
これからようやく現場に出られるので、大会で学んだことを活かしてもっと会社に貢献したいですね。先に製造現場に出ている同期と話すと聞いたことのない専門用語が飛び交うので、大会に出ていた分のブランクに焦りを感じるときがあります。現場では最初は迷惑かけないようにしていきたい、それだけですね。不良品を出さないように、真面目にコツコツと仕事をしていきたいです。
自分は小さいころから好きだと思える何かがあったわけではありませんし、特にやりたいことがあって入った道でもありません。ですが自分でこの道を選ぶことで本気になることができました。目標にしている人は五輪競技を経験されたOBの方、そして指導員の方ですね。現場で仕事ができるようになって、先輩や上司からは任せられる後輩に、後輩からは尊敬させる先輩になっていきたいですね。
先輩上司から一言
本人が悩んでいる時は悩みが技術面に対してなのか、プライベートに関してなのかをヒアリングし、状況を把握しています。技術面で上手くいかなければ、問題点を掘り下げて基礎から見直し、反復的な訓練をさせていました。精神面で不安があるときはじっくり話を聞いて、時には休みを取らせてリフレッシュさせることもあります。彼は、きちんと教えれば忘れることはありませんし、それを忠実に再現することができる。周りから「世界一」に見られるのはプレッシャーになると思いますが、職場に出たら、仕事を覚えながら回りと上手くコミュニケーションを取っていってほしいですね。職場でも同級生や後輩から慕われるような、尊敬される先輩になっていただきたいです。