どんな仕事でも同じですが、重要なのは知識やスキルではなくて、人間としてきちんとできる人かどうかってことです。
たとえば挨拶や礼儀正しさなどは田舎にいる人であればある程、その関係性を重要視しますから。だから有名な大学を出ているのに「ちーす」みたいな挨拶をしたり、時間に遅れたり、そういうのは人としてどうなのかなと思ってしまいます。
最近の子に多いのですが、携帯でよくメールをやりとりしていますよね。そうするとまず件名がない、自分が誰なのかを名乗ってない、こういった事は逐一返信して教えています。件名無しで差出人の名前が無くて「お世話になりました」ってメールが来ても「あなたは誰？」ってなりますよね。当社の社員でも何でもないですけど、その子が農業に興味があって、当社じゃなくてもどこかに勤めるとしたらやっぱり頑張っていってほしいです。だからそんな些細な事でつまずいてほしくないですね。それで、お世話になったら必ず農家さんにはお礼状を書いて、メールのアドレスを持っている方にはメールでいいからお礼をその日のうちに伝えるべきだよ、と教えています。素直に吸収する子は教えればその場でそのスキルを身につけていきますからね。

私が今の私であるのは家族や周りの方の影響がすごく大きいです。両親は私に「こうしろ、ああしろ」と言ったことが一回もありません。私の夫からも私の子供達からも「ああしてほしい、こうしてほしい」と言われたことがないです。私がやりたいと思う事を常に応援してくれています。
私は大学院を3年前に卒業しましたが、通っている間私があまりにも自由にしているので、同級生の男性社長さんに結婚していないと思われていたらしく「それで結婚して子供もいるの！？」と驚かれました。他の方には「塙さん独身だったらもっといろいろできたんじゃないの」と言われました。でも、私は結婚して子供がいるとか、大家族で、おじいちゃんおばあちゃんがいる家だとか、そういうところがすべて今の自分を作っているのだと思います。
だから田舎にいるから駄目だとか、有名大学に行っていないから駄目だとかそういうことは一切なくて、自分がこれからどうなりたいかで人っていくらでも変れるのだと思っています。女性の農業者さんとお話しする機会もよくあるのですが、「私は田舎にいるのでとても無理よ」って方、すごくもったいないし、田舎にいるからこそできることってたくさんあると思っています。おじいちゃんやおばあちゃんが子供を見てくれるからその間に農業に携われるとかスキルが磨けるって思えば、それはプラスのことですよね。口うるさく言ってくれる事だって自分を磨いてくれる事だと思います。私もいろんな方達に「塙さんここをこうしたらもっと良くなると思うよ」と言って頂くこともあり、そんな時にはちょっとカチンときたりもするのですが、でもその部分を素直に変えるとやっぱりプラスになることが多いので、いろんな方のおかげで今こうしていられるのかなと思っています。

考えているだけじゃ何も変わらないので、いろんなところに飛び込んでみてもらいたいと思っています。
当社の勉強会に参加した学生さんの中に以前、「誘った友達が急にバイトになってしまって来られなくなってしまいました、すみません」という子がいました。でも私としては全然「すみません」じゃない。その方自身がここにきていることがすごく重要なことで、来ればいろんな大学の学生さんもたくさんいるので意見交換ができるし、連絡先も交換してその後も多くの考えを吸収できます。バイトに行ったお友達は昨日と今日ではおそらく変化はあまりないでしょう。
参加したら、農家さんやいろんな学生さんと話をして、そこで得た知識や出会いが今後の自分の人生にものすごく影響を与えることになるかもしれないじゃないですか。10年後、20年後を考えた時の“今日”ってすごく重要だったりするので、学生さん達には「いろんなチャンスがあったらまずは行ってみたら」と伝えています。私も「勉強会があるから来てみたら」と誘われたものは予定が入っていない限り極力行くようにしています。そこで自分が何を得るかは私にしかわからないものですし。だから、勧められたものにはすべて“YES”ですね。