2歳の頃に交通事故で父が亡くなってしまって。父は農家の長男だったため、後継ぎがいなくなってはいけないという事で父の弟が母と再婚する事になりました。当時はこのような逆縁婚はめずらしくなかったのですが、母からは「義務教育(当時は中学校3年まで)が終わったら家を出て東京に行くからね」と、中学を卒業したら自立するようにとの暗黙の了解がありました。高校には通いましたが、卒業後はすぐ働くつもりでアルバイトばかり真面目に頑張っていましたね。母親と父親が別世帯となった為、「両方に家を建てて恩返ししたい」「人より倍働けば倍の給料もらえるだろう」と考えていて、高校卒業後は東京の不動産会社で営業として働き始めました。しかし、高卒で就職して、出世できるか、たくさんの給料がもらえるかと言ったらそう簡単にはいかない。「やっぱり学歴がないとダメだ」とすぐに感じました。大学に行く費用を稼いで一旦学び直すのでは時間がかかりすぎてしまうため、夜学に通って不動産や経営の資格など社長に必要な資格を取ろうと思いました。宅建主任士や建築士、簿記、会計の資格や保険の資格も取りました。当時は資本金1000万円がないと起業出来なかったので、朝早く起きて牛乳配達や新聞配達のアルバイト、昼間は不動産会社で働いて、夜は学校に行っていました。自分で目的を持ってやっている事なのでしんどくはなかったですが、今同じことをやれと言われても出来ないですね。

社員さん達には自己成長をしていってほしいです。ひと昔前は先輩社員の背中を見て仕事の仕方を盗んだもので、教えてくれるのを待っているような人は万年平社員で使い物にならない時代でした。でも今は1から教えて育てて、チームで協力して仕事をしていく時代ですよね。このように社内教育への考え方は変わりましたが、最終的には「自分で仕事を見つけて、改善を繰り返して自立してやっていくような人」じゃないと立派なリーダーにはなれないと思います。チームワークだけではまぐれで勝つことはあっても、個人のスキルを挙げていかないと勝ち続けられませんから。以前、サッカーのプロ選手達を招集して即興で作ったチームと某大学のサッカーチームが試合をして、大学側が勝ったことがあります。これは大学側がチームワーク重視の練習を組んでいた事に加え、プロ選手達が十分なチーム練習を出来なかったからですが、しっかりチームでの練習をした後ならやはりプロのチームが勝つでしょう。組織力は不可欠ですが、個人の能力向上も重要だという事です。1人1人の能力が高く、なおかつそれを生かせるチームプレイができれば勝ち続けることができるでしょう。

これから就職をする人には、やっぱり自分がやりたいことをやってみてほしいですね。一生は一回なので。私自身がそうしてきましたし、自己責任なら、人に迷惑をかけたり人を傷つけたりしなければ、農業だろうが芸術だろうがなんでもいいと思います。対価が大きいか小さいか、人から認められるかどうかは別として、自分がやりたいことが仕事になれば、その分だけ苦労もあるだろうけれど多かれ少なかれ幸せだと思います。私が何故社長になりたいと思ったかと言うと、親が離婚して家庭も裕福ではないためお金が必要で、自分の事は自分で何とかしなければいけないという環境だったからです。何になりたい、何をやりたい、といった希望はおそらく生活の環境の中で自然と出てくることだと思います。