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【The TOP ~社長の仕事~】

社長って普段どんな仕事しているの?

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株式会社武井工業所 代表取締役社長

たけい あつし

武井 厚さん

茨城高等学校~早稲田大学大学院アジア太平洋研究科国際経営学専攻修士課程

  • 2016年
  • 2次産業
  • 男性
  • 茨城県南
  • 製造業

マイナスからのスタート

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僕が社長に就任する前、まだ営業だった頃、当社は資金繰りが立ち行かなくなり不渡り※1を出す寸前でした。経営改革推進担当職を任命された僕は資金調達で方々を駆け回りましたが、断られ続けて各所からたらい回しにされて、最終的にファンドからは民事再生※2を薦められました。

「まいったな…」と失意のどん底で茨城に帰る道中、ある銀行さんから電話で「当行が支援します。しかし立て直す為にはこれからが大変ですよ」と言って頂けて。そうして無事不渡りを回避する事が出来ましたが、その後、会社を仕切っていた僕の父親達は経営責任を取って全員退任し、個人資産も出せるものは全て出して当面の資金繰りに充てました。
当社はその当時上場企業だった為、息子と言えど取締役でもない僕がすぐ社長に就任するのは常識的に難しく、二年だけと決めて外部から社長を呼び、その間にまずは管理本部長、副社長と段階を踏み、二年後に社長になりました。僕の社長人生はマイナスからのスタートでしたね。

※1 不渡り:借金や購入した物品の費用などに関して、支払い日を過ぎても返済されないもしくは支払われないこと。
※2 民事再生:資金の調達や運用が上手くいかなくなったり、債務超過(借金が会社の資産を上回る事)に陥るなどして、経済的に困難な状況に陥った法人が、法人を立て直すために利用できる手続のこと。

よりやる気を出してもらえる経営

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社長に就任してからは、それまで「人の使い方を間違っている、僕だったらこうするのに」とずっと考えていた事に取り組んできました。以前は、経営陣がそれぞれ違う指示を出していたので、皆戸惑ってバラバラに動いている、そんな状態でした。現在は「何のためにその結論を出したのか」を全員で共有して、納得した上で物事を進める事を徹底しています。

まず、朝は役員会から始めて、それぞれの担当する部門について、日々起きている事や問題・課題等を報告し合い、どう対応していくか役員全員で考えます。例えば、ある役員が相談に来て、僕がそこで答えを出しちゃったらもうそれで終わり、彼は考えなくていいわけです。仮にその解決策が間違っていた場合、「間違っていたじゃないか」「あいつはダメだ」みたいな事になってくる。役員全員が1つの経営チームとして会社の大小様々な問題に対して議論し解決していくようにすると、全員で納得して決めた事ですから失敗しても「次はこうしよう」ってなりやすいんですね。

また、当時の賞与の評価方式は、勤務態度が悪くても所属している工場の売り上げが良ければ賞与が上がる仕組みでした。それではやる気のある人がやる気を失ってしまう。だから人をしっかり評価する方式に変えました。
当たり前ですが「会社はちゃんと自分の事を見てくれているんだな」って感じて、よりやる気が出る経営にしないといけませんから。それに加えて、当社の工場は栃木と明野、岩瀬、小川と4カ所あり、週に2カ所、栃木と明野に行ったら来週は岩瀬と小川といった感じに朝7時過ぎには行くようにして、朝礼で今の会社の状況や5Sの話等をするようにしました。
社員が結婚したって報告が上がってきたら、その次に会った時に必ずおめでとうって顔を見て言うとか、とにかくコミュニケーションを取ることをひたすら繰り返してきましたね。これまでは良い人が辞めていく経営でしたが、今は経営方針に合わない人は辞めていき、残ってほしい人はちゃんと残る組織になりました。

公共から民間へ

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道路の側溝にも『茨城県型』があるんです。
インフラが整備される前、大量に作る必要があった時代は、規格を定めて各社に作らせればどこでも手に入るので効率が良かったんですね。茨城県は日本で道路実延長2位の県ですから、昔はそれだけやっていれば社員全員が食っていけた時代でした。それが今では公共事業は減少し続け、多くの会社が売上げを半減させてきている。「他社と同じ製品を作っていたらもうだめだ、このまま一緒に沈んでしまう」って思ったんですね。そこで民間向けのオリジナル製品の開発に力を入れてきました。

例えば当社の製品で現在一番売れている『フリードレーン』という側溝はデベロッパーという、土地を自分達で買って造成して、そこに自分達のブランドの家を建てて販売する建設業者によくご利用いただいています。デベロッパーは家だけでなく宅地としての魅力も高まるよう細部にもこだわるので「側溝もより美しく見えるものを」ということで当社のフリードレーンが起用されるんですね。
さらに、分譲地の道路は最終的に市町村へ移管されるので役所の担当者が視察に来るのですが、そこでうちのフリードレーンが気に入られて次の公共事業に使用されることもあるんです。つまり、昔は公共事業から物が売れていったのが、現在では民間が細部までこだわるのでより良い製品が生まれて、市町村の担当者がそれを見て公共事業で使うという真逆の動きになってきているんです。

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